こころに響く日本 一九一六~一九一八 あるヒンドゥー思想家の訪日印象記 ハリ・プラサード・シャーストリー

2019年9月3日

本著は一人のヒンドゥー思想家シャーストリーの1916年から1918年の僅か二年間の日本旅行記である。しかし当時の日本は、日清・日露戦争に勝ち、日韓併合を強行し、帝国主義の道を歩み始めた。シャーストリーの父シュリーダーダーは、生前中にこの日本の動きに危機感を強め、シャーストリーに何らかの改革をするため日本に行くように要請していたのである。シャーストリーはそのような使命を持って1916年秋、インドから日本に向かって船出し、同年10月9日に神戸に上陸した。
しかし親日家ではあるものの、親英的にして反帝国主義的なヒンドゥー思想家シャーストリーに対しては、その頃来日していた反英的な革命の志士たちからの脅迫や国粋的な日本人からの嫌がらせなどが厳しかったようである。当時日本に亡命していた孫文と偶然に丸善で会い、彼から中国に誘われ、ついに日本を諦め、1918年4月20日上海に渡った。本書はその間にシャーストリーが実際に見、学び、体験した激動の日本の知られざる側面である。出版に当たっては、その後の調査で明らかになったシャーストリーの妻小川八千代令夫人について「あとがき」で加筆した。

訳者略歴
前田 專學(まえだ せんがく)

1931年、愛知県名古屋市生まれ。1955年東京大学文学部印度哲学梵文学科卒業、1961年米国ペンシルヴァニア大学大学院東洋学科修了。Ph.D、文学博士。
米国ペンシルヴァニア大学助教授を経て、東京大学教授、武蔵野女子大学教授を歴任し、インド哲学・仏教学の第一人者として長年教鞭を執る。1989年日本学士院賞受賞。2002年勳三等旭日中綬章受章。2014年インド共和国パドマ・シュリー勲章受章。
現在、公益財団法人 中村元東方研究所理事長・東方学院長、中村元記念館館長、東京大学名誉教授、武蔵野大学名誉教授、史跡足利学校庠主
『ヴェーダーンタの哲学―シャンカラを中心として―』(平楽寺書店、1980年)『インド的思考』(春秋社、1991年)『ブッダ―その生涯と思想―』(春秋社、2012年)『インド思想入門―ヴェーダとウパニシャッド―』(春秋社、2016年)など、著書多数

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